「家に帰るためにがんばろか」

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患者さんの思いに寄り添う看護の大切さとやりがい

患者さんの思いに寄り添う看護の大切さとやりがい

私が以前勤務していた一般病院は高齢の方が多く入院しており、施設へ退院される方がたくさんおられる中で、入院中NPPV(非侵襲的陽圧換気)を使用している患者さんが自宅退院を目指し、退院後の生活まで考えながら患者さんと関わることの大切さを学ぶことができた事例を紹介します。

 

 

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Aさんは70代の男性、外傷性気胸の癒着術後他院より転院してこられた患者さんで、当初は食事摂取困難で経鼻栄養を行っており、CO2ナルコーシスにてNPPVを使用している方でした。


入院当初は環境の変化からかせん妄が出現してしまい、自己で経鼻栄養のためのマーゲンチューブやNPPVのマスクを外してしまうなどの行為がありました。病状をAさんへ説明しても理解は不十分で何度も同じことを説明したことを覚えています。


入院後3週間ほど経過した頃、環境にも慣れ少しずつコミュニケーションを取ることができるようになり、Aさんより「普通のご飯が食べたい」「このマスクを外して家に帰りたい」などの発言がありました。


自宅は独居で身寄りのないAさんでしたが、自宅に帰りたいという希望が強く、医師・看護師で方向性を話し合い、経鼻栄養を終了し経口から食事摂取を行い、NPPVを離脱し在宅酸素療法で自宅へ退院する方向となりました。

「口から食べるのは幸せや」

Aさんへ説明すると「家に帰るためにがんばろか」と前向きな発言が多くなり、表情も豊かになりました。
その日から、言語聴覚士介入のもと、嚥下食から評価を開始し、1ヶ月後にはお粥+軟らかめのおかずを摂取できるまでになりました。


経口から食事摂取できることが嬉しかったのか食事の時にAさんからは「口から食べるのは幸せや」と言ってもらうことができました。



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NPPV離脱後は経鼻の酸素を使用していましたが、労作時に酸素飽和度が下がってしまうため在宅酸素療法で自宅に帰ることとなりました。


初めのころは酸素のチューブなどを気にして行動する様子がなかったのですが、自宅退院に向けて家屋調査に行った時に「これは大変や」と発言がありました。家屋調査終了後、入院中に「このチューブに気を付けて生活しなあかん」と意識の変化もありました。



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退院当日、携帯用酸素ボンベを押しながら歩いているAさんから、「ここの病院に入院したからこそ自宅に帰ることができたんやと思う。色々と考えてくれてありがとうな」と笑顔で退院してもらうことができました。


入院中の状態だけではなく、Aさんの希望である自宅へ帰りたいという思いを考慮し、在宅での生活を見据えチーム一丸となって関わることの大切さを学ぶことができたと思います。



「口から食べるのは幸せや」

その人らしくを支えるやりがい

退院後の定期通院で来院される際にAさんとお話する機会がありました。
Aさんは自宅に退院後、友人とおしゃべりをしたりすることがとても楽しいと話してくださいました。


高齢者の独居の生活は困難を極め施設に入所する方が多くおられますが、その人らしく生活するためには患者さんの希望に寄り添った看護を提供することが大切だと思います。

日々の多忙な業務の中で在宅のことまで見据えて関わることはとても難しいと感じますが、在宅で生活している患者さんを見るととてもやりがいを感じます。

(地域包括ケア病棟 松田)
その人らしくを支えるやりがい

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