これは私が在宅医療に携わるようになり、2年が経過したころの在宅緩和ケアで関わった経験談です。
患者のN氏は当時81歳。N氏本人の希望で訪問看護、在宅緩和ケアがスタートしました。
ほどなくして食事・水分は徐々に摂取困難となり、経口摂取はできなくなりました。
癌性疼痛もひどくなり、適宜主治医のH医師と連携し、鎮痛剤の調整を行っていきました。また、点滴開始に伴い、毎日2回以上の訪問となり、1ヶ月の訪問回数は50回近くになりました。
患者のN氏は、とても気丈でしっかりされている方で、もともと様々なボランティア活動や民生員活動などをされており、ご自身が辛い状況であるにもかかわらず、気遣いをして下さり、明るく心優しい方でした。
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告知内容もしっかりと受け止め、子育ての話や実父を在宅で看取った経験談、死生観についても語ってくださり、
「家族との思い出が詰まった、住み慣れた自宅で最期の時を迎えたい…」
「父親の時から信頼していたH先生に死ぬまで見届けてほしい」
とはっきりと希望を伝えて下さいました。
病気から逃げず、泣き言も言わず、最期まで自分らしく生きようとされる姿に感動し、多くのことを学ばされ、訪看チームでその思いを支えたいと、一丸となりサポートさせて頂きました。
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お亡くなりになられるその直前まで、私たちに対して、「○○さん、ありがとう!大好き!」と手を握り、抱きしめてくださいました。
最期は遠方のご家族も駆けつけ、みんなに見守られながら、長年過ごされたご自宅で、眠るように天国へと旅立たれました。訪問看護開始から1.5ヶ月間の関わりでした。
「死」とは、その方の人生の最期で最大の出来事、ご家族の心にも深く深く刻み込まれる出来事であり、その大切な最期の時に関わらせて頂き、N氏の願う「最期の生き方」のご意向に出来る限り沿えるようにチームで一丸となりケアに当たりました。
在宅医療の限界を伝えられ、当初は不安に思っていらしたご家族様も、最後は心から感謝して下さいました。
これからも、N氏から学ばせて頂いた多くのことを胸に秘め、在宅療養される方々への支援につなげていきたいと思いました。
(訪問看護ステーション つばさ 衣笠 美穂子)
神戸協同病院 看護部
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